90ページの写真「日向山の森から大山山頂を望む」
日向山と日向薬師周辺は紅葉も美しいです。それも藤野集落まで歩行者しか通行できない日向川に沿った道を歩いて訪れると素晴らしい景色に出会えます。もうすぐ秋が深まって紅葉シーズンです。
行基が薬師如来像の良材を探し回ったという縁起の舞台、日向山の森です。本書では現代語に訳してご紹介したので、国立公文書館蔵『相州大住郡日向薬師縁起』仮名交り文のその部分の原文を以下引用します。
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…(前略)…
汝に囑す勉て我か相を模して此を将来に貽せ
其これに帰しこれを禮する者衆病悉く除き亦心疾を治せん
於是汝か情素満し我か願も亦足なん
然して後ニ利益備ハり能事此に畢なん
因て樹葉(相伝て梅椿檀の葉といふ)を與て曰
樹葉の至る所即ち汝か止る所
汝か止る所是我か像の存する所ならんと言終て即ち隠れ給ふ
基未曾有なる事を得て礼拝讃揚し喜感心に徹し渇仰声を起す
遂に乃ち佛語に任せて樹葉を擲るに其葉揺々曳しとして
此山に止る(伝らく今堂前の三株樹ハ是其遺蘖なりと)
爰に良材を求て像を造らんと欲して周く山澤を訪ふに得る所なし
時に二の神人有て数尺の香木を持し来て基に授て曰
此ハ是古昔佛世に優填王釋尊を仰慕して
天工をして尊像を刻しめし餘材なり
石槨に封閉して今猶朽ず吾儕熟師の誠心を感じて
特に力を運てこれを得たりと
基乃ち歓喜してこれを受て相約して言く
冀ハ英霊を此に崇めて永く我か寺の護法とせん
其姓名を問へハ則ち曰
熊野権現白髭明神なりと今山門の左右の二社是なり
…(後略)…
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この縁起の全文の翻刻は拙稿「『相州大住郡日向薬師縁起』仮名交り文縁起について」(『山岳修験』第67号、日本山岳修験学会、2021)に掲載いたしましたので、ご興味のある方はぜひお読み下さい。
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