表紙の写真その4 九字之大事
ご先祖が山伏で古文書を保管している家ならば、その中に普通にあっても珍しくない九字之大事の切紙(山伏が弟子に秘法を伝授する時に使用するノート)。これは文政13年(1830)のものです。
---------------------------------------------------
九字之大事
臨 獨 鈷 印
兵 大金剛輪印
闘 外獅子 印
者 内獅子 印
皆 外 縛 印
陣 内 縛 印
烈 智 拳 印
在 日 輪 印
前 寶 瓶 印
南無五大明王刀兵不能
害水火犯漂得百寿
歳得見百秋安穏富
貴自在莎■(くさかんむり+訶)
嵐吹木ノ間ノ風ニ枝に(たぶん耳?)ナリ
向フ荒神怨敵ヲ皆
吹拂
口伝 図(刀印で空を切る作法)
---------------------------------------------------
4世紀初め(日本は古墳時代初期)の中国の道教に起源があって、日本に伝来してからは密教や陰陽道の呪術として発展して現代でも行者の護身法として使用されています。宗派・流派・目的によって色んなヴァリエーションがあるようです。ほんとに極めて知りたい方は密教のお坊さん(真言宗・天台宗)や山伏さんについて修行して下さい。ここにも「ロイ」と書いてあって、文章に表さず大事な核心は口伝で伝授する旨書いてあります。
ところで、陰陽道や忍術でも使われることもあった呪術ということもあって、現代の安倍晴明ブームや忍者ブームの中でも「臨兵闘者皆陣烈在前」は良く取り上げられます。怪しい呪術的歴史ロマンをかきたてるからだと思います。『魔界転生』とか、『陰陽師』とか、『セーラームーン』とか、『忍たま乱太郎』とか、嫌いではないです。
が、江戸時代の南関東周辺の一般の日本人がこの呪術を使っている人を見たとしたら、それは山伏だった確率が最も高いはずです。なぜなら、陰陽師や忍者よりも圧倒的に山伏の人数が多かったからです。
« 表紙の写真その3 八菅山伏安永5年の碑伝 | トップページ | 表紙の写真その5『御行列』 »
コメント