日記

2023年11月30日 (木)

第43回 日本山岳修験学会 霧島学術大会

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鹿児島県霧島市まで出張してきました。第43回 日本山岳修験学会 霧島学術大会(共催:霧島神宮、霧島市教育委員会/後援:鹿児島県教育委員会、宮崎県高原町教育委員会)、11月25日(土)~11月27日(月)。紅葉が美しい霧島でした。

初日から、鹿児島県内唯一の国宝「霧島神宮本殿・幣殿・拝殿」のまさに国宝たる極彩色に囲まれた内部空間を拝観させて頂き、その素晴らしさに圧倒されました。午後のシンポジウムは、まさに二か所の高千穂を擁する南九州ならではの「天孫降臨と霧島」がテーマで、その中でも国指定重要文化財「霧島の神楽ー狭野神楽(宮崎県高原町)ー」の92歳の長老のお話に命をかけてお神楽を守ってこられた覚悟を感じ、感動しました。

2日目の研究発表は、南九州をフィールドにした研究発表が一件のみだったのと、鹿児島・宮崎で昔から地道な研究成果をあげてきた旧知の先生方のお姿が見えなかったのが残念でした。ただ、相模国霊場研究会でともに発起人として運営を手伝ってもらっている武井慎悟さんが若手研究者の新人賞とも言える奨励賞を受賞されたのがとても嬉しかったです。

最終日のフィールドワークは、3コースのうち念願の高千穂峰登拝コースに参加しました。噴火の影響で樹木が育っていないまさに絶景の火山群。朝は雨模様でしたが、登っているうちにどんどん雲が晴れ、地球の恐るべき力を視覚的に体感し、神仏への信仰心が生まれる必然的聖地地形であることを確信しました。

第44回学術大会は来年11月中旬、徳島県で開催されます。日本山岳修験学会は会員を常時募集しています。ご興味のある方はぜひご入会下さい。
http://www.sangakushugen.jp

2023年11月 6日 (月)

第9回 相模国霊場研究会

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今回の研究発表は以下のお2人が務めて下さいました。

1) 呉 珂(神奈川大学大学院 歴史民俗資料学研究科 博士後期課程)
「近現代相模大山の景観変遷と先導師の景観操作:絵地図、絵はがき資料と現在の動き」

2)飯塚 利行(清川村 文化財保護委員長)
「煤ヶ谷地区に残されたニホンオオカミの頭骨や前肢と武蔵御嶽信仰」

新しい方が4名もご入会下さり、質疑応答も含めて大変有意義な会となりました。神奈川新聞の記者の方やNHKダーウィンが来たのディレクターの方までオブザーバー参加下さいました。ご参加の皆様、ありがとうございました。

たくさんの観光客や登山者が訪れる大山ですが、その大山信仰を近世以来支えてきた門前町の先導師(もと御師)の現状を冷静に分析されていらっしゃる発表に、さて、大山はこの先どうなるのだろう?と思った方は多かったのではないでしょうか。発表者の呉さんは内モンゴルから留学されて相模大山の研究をしているという逸材。これからも応援したいです。

後半は、ニホンオオカミの講演会があるという誤解情報まで流れてちょっと受付に混乱をきたした注目のご発表。その頭骨や前肢のリアルな写真の紹介やその骨が呪物として地域にどのように伝承されて来たのか、とてもわかりやすい発表でした。宗教史研究で比較的明らかになっている18世紀前半のオオカミ信仰胎動期と、信仰の様相に謎の多い19-21世紀の呪物としてのオオカミの骨信仰。みなさん、オオカミに憑りつかれています。

次回は来年6月3日(月)の予定です。発表予定者も2人決まりました。私、城川と本田不二雄さん(ノンフィクションライター)です。詳細が決まりましたら改めて告知いたします。
http://banshowboh.world.coocan.jp/sagami_study/index.htm

2023年10月25日 (水)

本日の『朝日新聞』神奈川版に11/6相模国霊場研究会関連記事が掲載されました。

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第9回 相模国霊場研究会のご発表者のお一人、飯塚さんの調査研究が『朝日新聞』に掲載されました。ずいぶん大きな記事でびっくり。さっそくお問い合わせ電話が入っています。でもオオカミの話の講演会と勘違いしていらっしゃるご様子。一応、入会して頂くことになります、とお伝えすると、それはちょっと、というご反応。それでは困るのですなあ。

http://banshowboh.world.coocan.jp/sagami_study/index.htm

2023年9月29日 (金)

合掌 大先達 岡本孝道師と山念仏

この本58ページで譜面として掲載させて頂いた山念仏の最高の唱え手で、前 伽耶院(がやいん、兵庫県三木市)ご住職 岡本孝道師が今年の5月21日にお亡くなりになったそうです。大峰修行での岡本大先達の山念仏を私は生涯忘れません。ありがとうございました。合掌。
28ページの記事↓
http://banshowboh.cocolog-nifty.com/book2020/2021/07/post-aaf4b1.html

2023年7月 3日 (月)

徳川家康の姪「万姫」と日向薬師のお話

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現在放映しているNHK大河ドラマを観ていて、3年前の調査研究を思い出しました。

伊勢原市の日向薬師(江戸時代以前は「霊山寺 日向薬師」、明治時代以降は「日向薬師 宝城坊」)には江戸時代に何種類もの縁起(社寺、仏像、宝物などの由来、または霊験などの伝説を記した文書)がありました。

古いテキストは火事で焼失し(でも写しが国立公文書館に現存していてその内容の分析と翻刻は以下拙論でご紹介しました)、長い間、寛文4年(1664)に「松嶋雲居和尚」という人が書いて「菅原氏 光顕院専誉伝守」という人が寄進した縁起が、日向薬師の代表的な縁起として、『伊勢原市内社寺縁起集』や『神奈川県史』や『修験道史料集』で翻刻され紹介されてきました。

ところが、この縁起は、ちょっと的外れの縁起で、あきらかに日向薬師と関係のない人が書いていることが内容からわかってしまう文章でした。でも、今まで、この縁起に関わっている上記の人たちが誰なのかを調べて教えてくれる研究者がどなたもいなかったので、論文を書く都合上、自分で調べてみました。すると、以下のことがわかりました。

寄進したのは、徳川家康の生母 於大の方(現大河ドラマでは松嶋菜々子)と再婚した久松俊勝(同じくリリー・フランキー)夫妻の息子 松平定勝(つまり徳川家康の異父弟)の娘「万姫」。血筋としては徳川家康の姪、そして養女として豊後国岡藩(大分県)主 中川久盛に嫁いで正室。法号は「光顕院殿心蓮社専誉普照伝守大禅尼」。

『伊香保記』という有名な紀行文の作者でもあり、相模大山にも参詣に来ています。当時、中川氏と万姫は熱心な薬師如来信仰を持っていたこともわかりました。そして久松氏の本姓は菅原氏です(日本は伝統的に夫婦別姓で、結婚しても実家の姓を名乗ります)。

そして、この縁起を書いたのは臨済宗の高僧 雲居希膺(うんごけよう/うんごきよう)。仙台藩主 伊達忠宗(伊達政宗の次男)に呼ばれて松島瑞巌寺を再興した人です。

つまり、徳川家康の養女「万姫」という当時最上流階級のお姫様の薬師如来信仰に応じる形でやはり当時有名な臨済宗のお坊様が書いて寄進された縁起だったわけです。

【参考】
拙稿「『相州大住郡日向薬師縁起』仮名交り文縁起について」(『山岳修験』第67号、日本山岳修験学会、2021)

2023年6月 5日 (月)

第8回 相模国霊場研究会

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有意義な研究会となりました。しかも、初参加の方が4名様も!ご参加ありがとうございました。神奈川新聞社の取材までして頂きました。

私の発表、『大山地誌調書上』につきましては、これにて完結。一年間にわたり全20部を翻刻して皆様にお示しいたしました。これを元に編纂された『新編相模国風土記稿』と合わせて分析することで、大山山内の認識と江戸幕府地誌調所の認識のズレや、山内の詳細な実態も見える部分があることをお示しできたかと思います。

川島先生の 「玉餘道人『相州大山順路之記』からみた江戸時代の大山の風景」につきましては、この史料だけに限らず、新発見の道中記や記録の数々を詳細に解説して頂いて、大山参りと大山道についての同時代史料による実態と通説との乖離を含めて、膨大な研究蓄積情報量の多さで、大変勉強になりました。

さて、次回第9回は11月6日(月)15時開場、同じく相模大野ユニコムプラザさがみはら ミーティングルーム4で開催します。ご発表は、飯塚利行さん(清川村 文化財保護委員)と呉 珂さん(神奈川大学大学院歴史民俗資料学研究科 博士後期課程)のお2人に決まりました。

旧相模国エリアの寺社・巡礼・霊山・信仰対象物などについての研究情報交換会です。ご興味のある方のご参加をお待ちしております。

http://banshowboh.world.coocan.jp/sagami_study/index.htm

2023年2月16日 (木)

国会図書館で資料コピーの半日

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読まなくてはと思いながらもまだ読んでいない各種論文を読んだり複写したりするために2ヶ月ぶりに国会図書館まで出張(すべて購入できるほどのインカムはありません)。前回は上智大学N澤教授にばったりお会いしましたが、今日は知り合いには会いませんでした。東京の中心地も青空がきれいでした。

いつも利用していた国会図書館の大食堂がコロナ禍で閉店してしまったので、最近は引き続き営業している喫茶室のうち新館地下のお店でカツカレー定食を食べました。図書館に行くとカツカレーが食べたくなる条件反射。

2023年2月14日 (火)

金沢文庫 特別展「旅する、大蔵経―称名寺所蔵宋版一切経の道程―」

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フィールドワークガイド仕事の下見で横須賀まで出張したついでに、帰り際、金沢文庫の特別展「旅する、大蔵経―称名寺所蔵宋版一切経の道程―」に研修のため足を延ばしました。これはかなり手ごわい内容で、一般の皆様にこの内容を伝えるのはなかなか大変だろうなあと思いながらも、(現国名で言えば)インド・イラン・パキスタン・ウズベキスタン・パキスタン・中国ウイグル自治区など各所から中国にやって来て経典を翻訳したお坊さんたちや中国からインドへ渡ってたくさんの経典を持ち帰って翻訳したお坊さんたち、つまり「三蔵法師」が日本の文化にどれだけ大きな影響を与えたのか!と改めて思いながら勉強させて頂きました。2023年3月21日(火)までです。

余計なことを言うと、なぜアジア全体地図や東アジア地図を展示に使わないのでしょう?と素朴な疑問。閉館間際だったのでアンケートは書いていないので後出しコメントになりますが。

2022年11月24日 (木)

国学院大学博物館特別展「走湯山と伊豆修験―知られざる山伏たちの足跡―」

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国学院大学博物館特別展「走湯山と伊豆修験―知られざる山伏たちの足跡―」を拝見して研修してきました。

2007年頃の拙著や拙論でも紹介したことのある伊豆半島を時計回りに巡礼していた修行(「伊豆峰」)についての考古学的知見からの展示。丹沢山地エリアと同様、明治時代初めに途絶えてしまっているし全国的にはあまり知られている修験集団ではないのでこうやって特集するのは大変有意義だと思います。史料がそれほど残っているわけではない中で周辺分野の情報をうまく活用していて見ごたえもありました。

ただ、タイトルの「伊豆修験」の用語は果たして適切なのかしらん?「伊豆走湯山修験」または「伊豆山修験」の略称として使っているのでしょうが、「~修験」という用語は所属一山(または寺社)名と組み合わせて使うべきではないのかしらん?伊豆国には別組織に所属していた山伏もいたはずですしねえ。

会期は11月12日(土)~1月22日(日)です。皆様にお勧めいたします。
http://museum.kokugakuin.ac.jp/special_exhibition/detail/2022_shugend

2022年11月 9日 (水)

第7回 相模国霊場研究会のご報告

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今回はご参加者が少な目だったのが少し残念ではありましたが、薩摩花太夫さん(説教節語り)・京屋巧さん(三味線)による『小栗判官一代記 照手姫車引きの段』の実演から始まりましたので、最後まで飽きることのない研究会となりました。説教節の会の皆さんは八王子を中心に活動していらっしゃるので、どうしても多摩地域における説教節の変遷と現状のお話が多くなりましたが、藤沢から始まり、熊野本宮の温泉で復活する『小栗判官』のストーリーは相模国の霊場文化を考える上で踏まえておかなくてはならないものと心得ています。

後半の城川の発表は、『大山地誌調書上』20部中の最後の「八大坊」までの準備をする余裕がありませんでしたので、また後日、その3「八大坊」という形で翻刻をお示ししたいと思っています。

なお、今回は、会場の「ユニコムさがみはら」ミーティングルームで、楽器演奏が許されていなかったことを全く知らずに、企画を実施してしまいました。今回、「ユニコムさがみはら」のご担当者様の皆様には、誠に申し訳なく思っております。今後は、演奏を含む企画を実施する場合は、別の会場をセッティングしてご迷惑をかけないようにいたします。

次回8回は2023年6月5日(月)の予定です。詳細は会場が確保出来てから後日公表いたします。
http://banshowboh.world.coocan.jp/sagami_study/index.htm

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