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2021年7月 1日 (木)

51ページの写真「現在の八菅神社で行われる採灯護摩」

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八菅神社の採灯護摩は毎年の例大祭3/27-3/28。祭礼日は江戸時代の八菅山光勝寺国峰修行の祭礼日2/20-2/21の季節感をもとに新暦で受け継がれているのだろうと推測します。かつては近代の農村祭礼にはお決まりの競馬なども行われていたようです。

1972年(昭和47)に「八菅山修験道旧跡」が愛川町文化財として指定されました。これを機に八菅神社の祭礼で採灯護摩と神木登が復活したそうです。(※柄沢行雄「近代の八菅山と八菅神社」、和崎春日「現代の八菅山」『修験集落八菅山』慶應義塾大学宮家準研究室、愛川町教育委員会 1978)

八菅神社発行『八菅山 七社権現 八菅神社略縁起』(1979)にも、「3月27日・28日 例大祭(神木登 採灯護摩)」とあります。神木登についてはその後行われなくなったようです。

それにしても、一旦無くなって、しかも寺院から神社へと変わって100年も経ってしまった行事をまた復活させ継続させるというのは大変なご苦労があるものと推察いたします。八菅には伊勢原市日向と違って古文書が相当数現存していますが、全院坊はやはり明治維新とともに還俗しました。100年後でも祭礼復活に心血を注ごうという心得のある方がいらっしゃったのでしょうが、やはり採灯護摩を修行する山外の僧侶や山伏の皆さんのサポートが欠かせなかったと思います。

1872年(明治5)修験宗廃止令で日本全国の山伏は一旦消滅しましたが、中には修行が復活した地域もあります。奈良県吉野では神社化された金峰山寺が1886年(明治19)に仏寺に戻り蔵王権現の姿を拝することが出来るようになりました。山形県羽黒山のように神社化したまま経文を祝詞などにアレンジした新しい形で修行を続けているところもあります。

神奈川県では、還俗せず僧として修験の伝統を守った寺院もありますが、丹沢山地周辺で修行していた山伏はすべて還俗し修験寺は消滅。ただ、江戸時代に修験寺ではなかった密教系寺院の中に、明治以降、修験的な活動に参入した例がかなりあるようです。それは地域住民の信仰需要を受け止めるためにも必然だったのかもしれません。

江戸時代は、高野山(和歌山県)でも醍醐寺(京都府)でも山伏の山内での身分が低かったので、修験以外の正式の僧侶が山伏修行を目指すという例はあまりなかったと思います(中世以前はたくさんあります)。ところが、明治になり高野山では山伏は消滅しましたが、醍醐寺では色々と事情(※林先生のご論考参照:林淳「修験道研究の前夜」『修験道入門』岩田書院2015、「仏教と修験道」『現代思想 仏教を考える』2018)があって修験の復権を目指す活動が盛んになり社会的広報活動も始まりました。

社会的にも「日本仏教としての修験道」「普遍宗教としての修験道」といったプラスの評価が少しずつ認知されるようになったようです。戦前軍国主義国家による登山奨励が修験の社会的評価につながった可能性も鈴木正崇先生がどこかで述べていらっしゃったような?

戦後も、高尾山(八王子市)が昭和30年代頃から修験道を重視し修験の雰囲気一杯のお山へとヴァージョンアップされたように、山伏修行と修験道は近現代の社会では魅力的な文化遺産として評価が上がって来ていたのです。高度経済成長で大きく変貌しつつある日本の国土と社会に危機感を抱いた現代人も、「自然」と一体化する修行という「伝統文化」に魅力を感じないはずはありません。旧国鉄の「ディスカバージャパン」キャンペーンが現代人の心に響いた1970年代は祭礼の文化財化と肯定的評価も高まっていた時代です。(※阿南 透「高度経済成長期における都市祭礼の衰退と復活」『国立歴史民俗博物館研究報告』第207集 2018)

山伏が怪しい存在ではないと気付いてくれる時代がやっと到来したのだと思います。そして、八菅神社の採灯護摩復活に際しても、それを担う僧侶や山伏の皆さんが現代においても神奈川県エリアにたくさんいらっしゃるというのも奇跡的です。この行事が末永く続いていくことを切に祈ります。

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