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2021年3月16日 (火)

28ページの写真「石尊大権現」「大天狗」「小天狗」の狛犬台座

P28_sekison

まず「大天狗」「小天狗」がいつから祭られていたかはわかりません。全国に同じような天狗の祭り方をしているお山があるので、かつてそういう天狗ブームがあったのかなあと推測するしかありません。

「石尊権現」は、鎌倉時代の13世紀には成立していたと考えられる『大山縁起』真名本の中に「本宮に化池あり。或いは失す。恒に神あり。石尊権現と名づく」とあります。「本宮」とは山頂の大山寺本宮(現在の阿夫利神社上社)、江戸時代には「石尊宮」とも呼ばれています(『大山地誌調書上』)。全国の山頂祭祀遺跡と同じように初めて足を踏み入れた古代の修行僧たちによって祭り始められた神と考えるのが自然だと思います。

さてそのご神体は?

実は、江戸時代の大山の石尊権現の「石」の観察記録が残っています。寛政7年(1796)の津村正恭の随筆集『譚海』には「石尊権現の宝物に小石あり、青色なり、先年安部友之進採薬御用にて廻国のとき、この石を拝見せしに、綴耕録にいへる鮓荅という石なるよし、折節旱損にて雨乞しけるに、此石を友之進乞出して綴耕録にあるごとく水にひたし雨乞せしに、雨降て土民大によろこべりといへり」という不思議な話が載っています。

「鮓荅」とは『日本国語大辞典』には
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さとう
〘名〙 馬、牛、羊、豚などの胆石。また、腸内に生じた結石。解毒剤として珍重され、また、雨乞いのまじないとして用いられた。牛黄(ごおう)。馬の玉。ヘイサラバサラ。ドウサラバサラ。さくとう。
〘名〙 (pedra (石の意)とbezoar (結石の意)を重ねた語からか)⸨ベイサラバサラ⸩ 馬または牛・羊・鹿などの腹中から出る石。獣類の腸内に生じる結石。解毒剤として用いた。鮓荅(さとう)。馬の玉。また、病気をなおす呪いに唱えることばとしてもいう。
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とまあこれまた不思議な物体。

『譚海』の話は幕末の『皇国名医伝』中巻(1851)の中にも阿部照任友之進の事績の一つとして「相州雨降山、世称大山、観神庫有一石如玉・・・(云々)」と採用されています。『譚海』の安部さんは阿部さんだったようです。いかに幕府の医官による薬種調査とは言え、部外者に見せているし、小さいとあるので、まさか石尊権現のご神体の磐座ではないでしょう。

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